カテゴリー別アーカイブ: モダニズム・ノート

モダニズム・ノート(8)

・合目的性(ツベックメーシヒカイト)

「Zweek」という単語は直接的な物質の要求を満たすもの「実用性」を意味するだけではなく、内なる有機的な目的ないしは宿命―サリバンの使った意味での「機能」-という意味でも使われていた。(使用例1925年のヒューゴ・ヘーリングの文章「形態へのアプローチ」)

 

・カントが美的なもののカテゴリーから特に目的を排除していたことからすれば、「実用性」は芸術を成り立たせているものについての理解に大きな転換を生じさせたことを暗示している。Gグループとして知られる1920年代のベルリンの左翼建築家サークルにとって、合目的性の強調は重要な関心ごとであった。

 

・ミースは「機能偏重」の建築に批判的な立場をとり、機能に注意を払うことは美の前提条件ではあるが美に至る手段そいのものではない。(1930年「美しく実用的に建てよ!冷たい機能性{Zweckmassigkeit}に終わりを」)

 

・  1926年「現代の機能的建物」{Der modern Zweckbau}アドルフ・ベーネ

ライトの住宅だけが「住人たちの最も基本的な機能に立ち戻ることによって、生に直接根ざした・・・ポジティブな即物性」この判断基準こそ、即物的な建築の特質を規定している。

 

貴志 雅樹

(完)

 

※「モダニズム・ノート」は貴志雅樹が生前自身のブログに綴ったものを再構成したものです。

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モダニズム・ノート(7)

歴史的に考えるならば、「機能」という言葉には、1930年頃までは少なくても五つの異なる用法を特定することができる。

 

5.ドイツ語の「sachlich」(即物的)「zweckmassig」(合目的的)「funktionell」(機能的)の訳語としての「機能的」

 

・即物性(ザッハリヒカイト)

文字通りには「事物性」を意味し、英語やフランス語に対応する語がない。その意義は、1880年代90年代にドイツとオーストリア建築家たちを席巻した「リアリズム」についての論争の文脈上にある。ドイツ語圏では「リアリズム」という言葉は構築的な合理主義を意味した。近代的な土木工事に最も明瞭に見られるような構造の力学的表現である。ヘルマン・ムテジウスのよると、即物性という言葉は、反装飾的な、非貴族的な、土地伝来なものに基盤を置く、日常の事物の中に見出される、合理的な、科学的な、実用的な、生来的な、近代的な、などの多くの意味を持った。そして1920年代までにはモダニズム文化のあらゆる側面に適用され、ワイマール・ドイツではほとんど「モダニズム」の同義語にまでなった。新即物主義は、非=表現主義的な近代芸術の総称だったのである。

 

貴志 雅樹

 

※「モダニズム・ノート」は貴志雅樹が生前自身のブログに綴ったものを再構成したものです。

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モダニズム・ノート(6)

歴史的に考えるならば、「機能」という言葉には、1930年頃までは少なくても五つの異なる用法を特定することができる。

4.「用途」を意味する「機能」

ある建物やその部分に定められた活動を記述するものとして「機能」という言葉が使われることが現在では珍しくないが、二十世紀以前には思いのほか稀であった。

 

貴志 雅樹

※「モダニズム・ノート」は貴志雅樹が生前自身のブログに綴ったものを再構成したものです。

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モダニズム・ノート(5)

歴史的に考えるならば、「機能」という言葉には、1930年頃までは少なくても五つの異なる用法を特定することができる。

3.「有機的な」形態理論における生物学的隠喩として

ドイツ・ロマン派が発展させた形態についての有機的な考え方から引き出されたもの。

人間の要求を満たすという意味での「機能」ではなかった。

「形態は機能に従う」というアフォリズムで有名なルイス・サリバンにおける「機能」は、いかなる点でも有用性や使用者の必要性と無関係である。

代わりにそれは、有機的な本質の表現という形而上学をすべての基盤にしている。

 

貴志 雅樹

※「モダニズム・ノート」は貴志雅樹が生前自身のブログに綴ったものを再構成したものです。

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モダニズム・ノート(4)

歴史的に考えるならば、「機能」という言葉には、1930年頃までは少なくても五つの異なる用法を特定することができる。

2.生物学的隠喩―構造の各部分が有する相互および全体に関わる目的を記述するもの。

18世紀末に発展した生物学という新たな科学においいぇは、各器官は有機体全体の中でそれが果たす機能や他の期間との階層秩序的な関係によって分析された。

十九世紀半ば以降の英語圏において「機能」という言葉が理解されたのは、主に、構造の中の各部分が果たす役割という意味においてである。

 

貴志 雅樹

※「モダニズム・ノート」は貴志雅樹が生前自身のブログに綴ったものを再構成したものです。

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モダニズム・ノート(3)

歴史的に考えるならば、「機能」という言葉には、1930年頃までは少なくても五つの異なる用法を特定することができる。

 1.数学的隠喩としてー古典的な装飾体系への批判

機能とは、建築のどの構成要素においても力学的な力と素材を結合させることであった。(1740年代ヴェネチアの托鉢僧カルロ・ロドゥーリは古典的な装飾体系を攻撃する中で、初めて建築に対して「機能」という言葉を用いた。)

 

貴志 雅樹

※「モダニズム・ノート」は貴志雅樹が生前自身のブログに綴ったものを再構成したものです。

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モダニズ・ノート(2)

「機能」「機能的」「機能主義」

機能についての「理論」とされているのはいずれも最近になって作られたものであって、近代建築が「機能主義」に支配されていたとなっている時期のものではない。

-1960年頃以降の建築におけるモダニズムの批評家によるー

・ビル・ヒアリー「二十世紀における建築のマニュフェストを総覧してみても、機能から空間的形態を決定するという論を表明したものを見つけることはできない。」

 

貴志 雅樹

※「モダニズム・ノート」は貴志雅樹が生前自身のブログに綴ったものを再構成したものです。

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モダニズム・ノート(1)

モダニズム建築を生み出した、イデオロギー的バックボーンは、何であったのか。

あるいは、モダニズム建築と呼ばれら建築の特性とは何であるか。

これらを、再検証するために、このノートを記す。建築にかかわるものにとって、良きにつけ悪しきにつけ影響を与え、教条的に呪縛を与え続けているモダニズム建築について問直す機会となれば幸いである。

このことを思い立ったのは、田中純氏による「残像のなかの建築 モダニズムの<終わり>に」に依るところが大きい。

-栄光と誹謗に包まれ、さまざま物語の主題をなしたモダニズム建築が実在したことはなかった。-

モダンアートの諸運動と比較して、純粋芸術ではない建築において、明確な定義づけが困難かもしれないが、ある見解を示したい。

 

貴志 雅樹

※「モダニズム・ノート」は貴志雅樹が生前自身のブログに綴ったものを再構成したものです。

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