モダニズム・ノート(7)

歴史的に考えるならば、「機能」という言葉には、1930年頃までは少なくても五つの異なる用法を特定することができる。

 

5.ドイツ語の「sachlich」(即物的)「zweckmassig」(合目的的)「funktionell」(機能的)の訳語としての「機能的」

 

・即物性(ザッハリヒカイト)

文字通りには「事物性」を意味し、英語やフランス語に対応する語がない。その意義は、1880年代90年代にドイツとオーストリア建築家たちを席巻した「リアリズム」についての論争の文脈上にある。ドイツ語圏では「リアリズム」という言葉は構築的な合理主義を意味した。近代的な土木工事に最も明瞭に見られるような構造の力学的表現である。ヘルマン・ムテジウスのよると、即物性という言葉は、反装飾的な、非貴族的な、土地伝来なものに基盤を置く、日常の事物の中に見出される、合理的な、科学的な、実用的な、生来的な、近代的な、などの多くの意味を持った。そして1920年代までにはモダニズム文化のあらゆる側面に適用され、ワイマール・ドイツではほとんど「モダニズム」の同義語にまでなった。新即物主義は、非=表現主義的な近代芸術の総称だったのである。

 

貴志 雅樹

 

※「モダニズム・ノート」は貴志雅樹が生前自身のブログに綴ったものを再構成したものです。

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