カテゴリー別アーカイブ: 建築家 貴志雅樹

形式論ノート(4)

形式についての一つの視点として、横山天心先生との討論の一部を紹介しよう。

K:君たちはよく曖昧というけど、それは曖昧っていう誤魔化し方じゃなくて、形式と言いながらそれがフィットしないと言いたいのでしょう?曖昧を包含するっていうのは、ある形式を求めているけれど建築を創った時に、それが全部フィットするって事ではないのが形式だと言いたいのかな?

T:まぁそれはそうですね。形式っていうのは不自由なものなのですよ。その不自由がもたらす、うーん、自由があって、そこを僕は考えたい。

K:不自由だから自由があって、だから形式を追い求めたいというのはすごく分かる。ただ、曖昧のまま何かを受け入れるとか、なにかのためにとか、どうして形式がいるのか?

T:形式はアクティビティの拠り所ですよ、僕はそういう風に信じている。

 

貴志 雅樹

※「形式論ノート」は貴志雅樹が生前自身のブログに綴ったものです。故人を偲ぶ会を前に事務所のブログへも掲載させていただきます。

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形式論ノート(3)

引き続き形式についての言説を紹介しよう。

 

<エイドリアン・フォーティー>

英語には「形」(フォルム)のただ一語しかないが、ドイツ語には「形態」(ゲシュタルト)と「形式」(フォルム)の二語があるからだ。形態は一般には感覚で受け取られたものとしての対象を言うが、形式はふつう具体的な個物からある程度抽象化することを含意している。

「言葉と建築」より

 

<磯崎 新>

≪建築≫は結論的にいえば、表題どおりに形式なのである。だから「≪建築」という形式」とは、同義反復しているにすぎない。≪建築≫その概念が発生することによって、ひとつのジャンルを構成した。ジャンルは自らの掟、すなわち広義の制度をかかえこんでいる。-中略―すなわち、形式を≪建築≫と等置することによって、建築の生成する機制でありかつ方式でもある、伝統的にポエティックスと呼ばれる部分にそれを接続したいと考えている。「建築という形式Ⅰ」

 

<坂本 一成>

硬直化し、凝り固まった私たちの身体が、ただ自由で気ままな姿勢をとるのでなく、気功や太極拳、またさまざまな体操の形式化された型に沿うことで、柔軟さを快復し、自由を獲得するように、構成されたある種の空間や場に関わることで快適な自由を獲得する、そんな構成の形式によって私たちに関わる建物を<構成の形式としての建築>と位置づけることができそうだ。「建築に内在する言葉」

 

貴志 雅樹

※「形式論ノート」は貴志雅樹が生前自身のブログに綴ったものです。故人を偲ぶ会を前に事務所のブログへも掲載させていただきます。

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形式論ノート(2)

具体的に形式というものを挙げる。

<平面形式> ①ワンルーム形式 ②リニア形式 ③分棟形式 ④コートハウス形式 ⑤入れ子形式 <断面形式> ①スキップフロア形式 ②螺旋形式 ③浮遊形式 等がある。

平面形式が建築の枠組みを決定するものなら、断面形式は空間の関係性を創出する。

形式の種類はこれ以上考えられるし、一つの建築の中に形式が混在し、変形して存在する場合もある。

 

建築の形式(Architectural Form)について理解を深めるために以下の文章を引用する。Form(形)について書かれた部分である。

―建築は「形」の問題について自らの特権を主張している。それは建築というものがわれわれのまわりの物理的な対象と空間とを物理的に形作ることにあったからである。-

この主張によってわれわれは、西洋思想における建築の意義全体の土台となる「形」の核心へと直行できる。

「形」には両義性が内在する。一方では「形状」を意味し、他方で「考え」や「本質」を意味しているという両義性である。-

「言葉と建築」 エイドリアン・フォーティー著

 

貴志 雅樹

※「形式論ノート」は貴志雅樹が生前自身のブログに綴ったものです。故人を偲ぶ会を前に事務所のブログへも掲載させていただきます。

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形式論ノート(1)

建築における形式とは、建築を構成する基本形のようなものかもしれない。

形式とは、建築が成立している時代の歴史・文化・風土・技術をベースに生みだされてきたもので、人の生活を受け入れ、人と人、人と社会、人と自然等の関係性を構築してゆく型のようなものかもしれない。

型(Type)が建築の核心の観念で建築の本質に迫るものであり、様式(Style)が建築の美を担保するものであるなら、形式は建築の関係性を担保するものであるかもしれない。

ただ、形式には、建築の関係性を固定化するという矛盾も孕んでいる。そこで我々は、新たな形式を模索し続けるか、従来の形式をズラス事など試みながら、絶えず建築の関係性を新たに更新してゆく必要に迫られている。

 

貴志 雅樹

※「形式論ノート」は貴志雅樹が生前自身のブログに綴ったものです。故人を偲ぶ会を前に事務所のブログへも掲載させていただきます。

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貴志雅樹教授偲ぶ会

根塚です。

若干、内容が一昨日と重複しますが、ご了承ください。

3月21日土曜日シンポジウムの後、貴志研究室+横山研究室で設計した木津の庄コミュニティセンターで偲ぶ会が開催されました。

総勢約70名が集まり、故人の思い出を語り合いました。

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当日の料理は約半分は学生が手作りし、もう半分は高岡市にある「あんしんごはん」にケータリングを手配しました。

また貴志雅樹教授はお酒を飲むと必ずと言っていいほどマカロニサラダとメロンパンを食べておりましたので、今回もしっかりと用意されています。

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料理について解説する横山天心先生です。

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また大学時代の貴志雅樹教授の写真や(主に酔っぱらった)映像が流れる中、思い出を語り合いました。

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素敵な偲ぶ会でした。ありがとうございました。

根塚陽己

 

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貴志雅樹回顧展特別シンポジウム・偲ぶ会

貴志泰正です。

3月21日(土)、富山大学高岡キャンパスつままホールにて開催中の貴志雅樹回顧展と連動した特別シンポジウム「貴志雅樹が残したもの」が13時より同キャンパス講堂で行われました。

また、シンポジウムに先立ちまして、富山県と富山大学より感謝状をいただきました。

退官まで全うできませんでしたのに、このようなあたたかなご配慮をいただき、有難うございます。

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シンポジウムにはスペシャルゲストとして建築家の竹原義二先生にご参加いただき、故人との思い出や2人で行っていた黒板に描かれた図面を使った講義の様子などについて語っていただきました。

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富山大学芸術文化学部からはパネリストとして前田一樹先生、武山良三先生、在学生の酒井克弥君に、進行役として横山天心先生にご参加いただきました。

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弊社からもパネリストとして私が貴志雅樹の大阪の事務所での実績を紹介し、後半のパネルディスカッションには貴志研究室の卒業生である根塚陽己も加わりました。

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皆様の御期待にそうお話ができたかはわかりませんが、事務所を引き継ぐ2人が「貴志雅樹が残したもの」についての思いを語らせていただいたつもりです。

たくさんの方にお越しいただきましたことに心より感謝しております。有難うございました。

 

また、16時半より木津の庄コミュニティセンターに場所を移しまして、偲ぶ会を開いていただきました。

この場所は富山大学の横山天心先生と共同で故人が設計した建築です。

葬儀に続いて偲ぶ会も自身の設計した建築のなかで行えるとは、なんと幸福なことかと思います。

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シンポジウムに続いて、こちらへもたくさんの方々にご参加いただきました。有難うございました。

明るかった空も会が進むにつれて暗くなり、明かりの灯った木津の庄コミュニティセンターは開始時とは異なる姿を見せてくれました。

食卓には故人の好きだった料理を並べていただくなど、皆様方の粋な演出に心より感謝しております。

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貴志雅樹は富山に、高岡に来ることができ、皆様にお会いできて、幸せ者です。

本当に有難うございました。

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貴志 泰正

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回顧展、はじまりました。

酒井です。昨日より、富山大学高岡キャンパスのつままホールで貴志雅樹回顧展を開催しています。

展示品は、生前に退官記念作品集のために貴志先生本人に選んでもらった作品に加え、写真・図面・文章などの十分な資料が残っていた作品、あわせて38の建築作品をパネルにまとめたものを中心に、いくつかの作品は傍に模型と原図も並んでいます。

それらを初期(独立から阪神淡路大震災以前)、中期(阪神淡路大震災以降から富山大学赴任以前)、後期(富山大学赴任以降)と、貴志環境企画室と相談し大きく三つの期間にわけて展示しています。

作品集に寄稿してくださった難波和彦氏と竹原義二氏の文章もはじめに展示しておりますので、併せてご覧いただければ貴志先生の建築をより理解していただけると思います。

回顧展1回顧展2回顧展3回顧展4

まだ展示が始まったばかりですので今日は設営が終わった状態の写真だけ紹介させていただきます。パネルの作成や設営に協力してくれた学生のみなさんありがとうございました!

 

酒井克弥

 

※ありがたいことに大阪でも「貴志雅樹を偲ぶ会」を開催しようとのお話があり、計画を進めております。

故人が御世話になった方々には改めまして御案内させていただく予定ですので、何卒宜しくお願いいたします。

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貴志雅樹回顧展

はじめまして、富山大学 貴志研究室の酒井克弥です。

貴志環境企画室のブログに突然登場したのはなぜなのかといいますと、貴志先生の勤務していた富山大学高岡キャンパスでは、現在、3月14日から開催予定の貴志雅樹回顧展の準備が進行中です。大阪を拠点に活動していた貴志先生にゆかりのある方は特に関西に多いと思いますが、富山にまで来ることはなかなか大変ですので、ここで設営準備や会場の様子など少しでもお伝えしていけたらよいと思っています。

今回は、富山大学芸術文化学部のGEIBUN GALLERYでキュレーターをされていて、貴志先生とも親交のあった羽田純さんにデザインしてもらったフライヤーが出来上がりましたので紹介したいと思います。

貴志雅樹回顧展 フライヤー1

貴志雅樹回顧展・シンポジウム フライヤー2

あわせて3月21日(土)に、建築家・貴志雅樹の教育者としての業績を振り返るシンポジウムと、1枚目の写真に写っている、富山大学の研究室で設計した「木津の庄コミュニティセンター+公園」において貴志先生を偲ぶ会を企画しておりますので、ぜひ多くの方にご参加いただけたらと思います。

 

酒井克弥

 

 

※ありがたいことに大阪でも「貴志雅樹を偲ぶ会」を開催しようとのお話があり、計画を進めております。

故人が御世話になった方々には改めまして御案内させていただく予定ですので、何卒宜しくお願いいたします。

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四十九日の法要を終えました。

2月28日、大阪府堺市の願正寺にて弊社の創設者貴志雅樹の四十九日の法要を執り行いましたことを御報告いたします。

また、葬儀を終えてからもたくさんの御供物を頂戴しておりますことに、心より感謝申し上げます。

誠に有難うございます。

 

2015年2月28日

株式会社 貴志環境企画室

主宰 貴志 泰正

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引越し完了!!

昨日から取りかかった貴志雅樹研究室の整理は一日では終わらず、本日の午前中でようやく片が付きました。

明日25日は国立大学の入学試験ですので、午後からは大学構内へ入れなくなるとのことで、ギリギリのタイミングでした。

 

もう処分の対象にならないでしょうから公開しますが、禁煙の部屋でもタバコは我慢できなかったようです。

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吸殻を捨てるのがなぜか少し寂しくて、つい一番最後まで残してしまいました。

明日からは大阪へ戻りますし、こんなことではいけませんね。

前を向いて進んでいこうと思います。

 

貴志 泰正

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