月別アーカイブ: 2015年5月

形式論ノート(10)

江戸末期の古民家を再生した。大和棟を持つ住宅である。明治、昭和と増築されていたが初期の姿に減築し、元の形式に戻した。内部は土間と板間で構成し、間仕切りの建具は取りはらい、4畳半の畳だけを象徴的に板間に配し茶室とした。 大きな屋根の下に一続きの空間があるのだが、大和棟という形式のもとに自由な空間を獲得した例である。

 

貴志 雅樹

※「形式論ノート」は貴志雅樹が生前自身のブログに綴ったものです。故人を偲ぶ会を前に事務所のブログへも掲載させていただきます。

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形式論ノート(9)

ウィトゲンシュタインの「論理哲学論考」の一節を紹介する。

すべての対象が与えられるとき、同時にすべての可能な事態も与えられる。

対象はすべての状況の可能性を含んでいる。

事態のうちに現れる可能性が対象の形式である。

世界の実体が規定しうるのは、ただ形式のみであり、実質的な世界のあり方ではない。なぜなら、世界のあり方は命題によってはじめて描写されるものであり、すなわち、諸対象の配列によってはじめて構成されるからである。

 

貴志 雅樹

※「形式論ノート」は貴志雅樹が生前自身のブログに綴ったものです。故人を偲ぶ会を前に事務所のブログへも掲載させていただきます。

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形式論ノート(8)

大橋良介氏の切れの構造に関心を持ったのは次のような文章があったからだ。
 -「切れ」は日本のプレ・現代(モダン)の美的造形においてあらわれ、日本のモダニズムの中で、内なる異世界として作用していた。いま日本のモダニズムそれ自身の熟成の中で、「切れ」はポスト・モダニズムを成立させる鍵としてあらわれている。-
ーもしも「ポスト」・モダニズム建築というものがその名にふさわいい内容をもつとするなら、それの少なくとも一つの方向はこの「切れ字」もしくは切れを含んだ言語としての建築だということができる。なぜなら、切れとは、技術の粋を尽くして自然をある仕方で自覚的に切ることであった。自然はその切れをくぐって技術の中に、ある仕方で蘇った。-
建築を言語としてとらえる見かたは、C・ジェンクス「ポストモダニズムの建築言語」にみられるように、ポスとモダンの特徴のようだが、ヴァレリーもゲーテも言語として捉えていた。重要なのは言語のもっている構造主義的なパラダイムを逸脱することにある。建築におけるポスト・モダンはその部分を理解していなかった。

 

貴志 雅樹

※「形式論ノート」は貴志雅樹が生前自身のブログに綴ったものです。故人を偲ぶ会を前に事務所のブログへも掲載させていただきます。

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形式論ノート(7)

切れの構成法を思い立ったのは、大橋良介氏の「切れの構造」-日本美と現代思想ー中央公論社による。切れ・つづきというように、他者と切れることにより他者を際立たせ融合するという概念。(連続・非連続の概念とは異なる。)これは現代進行中のS邸のプロジェクトにおいて、平面形式と屋根の形式とを切れの構造で融合させられないかと考えているからである。
以下、大橋氏の世阿弥の「花」の部分を引用する。
 華麗と簡素という二つの相反する方向はここで、互いに切れて独立しながら互いのあり方のうちへ浸透していく。ここに「切れ・つづき」の構造が成り立つのである。この切れ・つづきは、繰り返していえば人間が「生死」というあり方を背負っているところから生じるものである。-中略ー余剰を切り捨てるということは、日常的な自然性を切るということである。しかしその切れを通して日常的な自然性が、いっそう深い相において蘇るというところに、型の切れの本質がある。

貴志 雅樹

※「形式論ノート」は貴志雅樹が生前自身のブログに綴ったものです。故人を偲ぶ会を前に事務所のブログへも掲載させていただきます。

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形式論ノート(6)

日本建築は構成的ではないと言われるが、日本の芸術に見られる和の構成法としていくつか挙げる。①切れの構成(俳句などにみられる)②曖昧にしながら統合する構成(洛中洛外図の雲)③過去の文脈を利用する構成(枕詞・序詞)④増殖してゆく構成(雁行、九の間論)⑤天地人の構成(活け花)⑥余白の構成(書道)⑦重層の構成(庭園における見え隠れ)⑧ミニマルな構成(枯山水)⑨布石による構成(回遊式庭園)各構成法について、具定例を示すと同時に、建築について用いられているかどうかも考察してゆきたい。

貴志 雅樹

※「形式論ノート」は貴志雅樹が生前自身のブログに綴ったものです。故人を偲ぶ会を前に事務所のブログへも掲載させていただきます。

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市役所と亀

貴志です。

ここ数日、あたたかいというよりは暑くなってきましたね。

昨日、仕事で大阪市役所へ行った帰りの風景です。

2015-04-30 11.49.07

土佐堀川に亀がいました。

2015-04-30 11.48.15

2015-04-30 11.48.45

水辺は涼しそうで、羨ましかったです。

 

今日から5月。

今年は特に時の経つのが早く感じます。

しっかりやるべきことをクリアしていかなければ…。

 

貴志 泰正

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