N・シュルツの「実存・空間・建築」のなかで以下のように定義している。
・実存的空間とは比較的安定したシェマの体系、つまり環境の「イメージ」であり、たくさんの現象の類似性から抽象されて取り出された一つの一般化であって「対象としての性質」を有するものである。
・建築的空間とは実存的空間の「具体化」である。
形式論的にいうと、実存的空間とは建築の形式であり、具体的に出来上がった空間が建築であると言い換えられる。
しかし、実存的空間を具体化することが建築とはいいがたい。
建築の多様性を封じ込めるおそれがあるし、実存空間の存在を認めると、価値観を固定化する恐れがある。
本質的で固有なものの存在を追及するより関係性の中から空間を生み出さなければならない。
貴志 雅樹
(完)
※「形式論ノート」は貴志雅樹が生前自身のブログに綴ったものです。