桜の季節だが、西洋では日本人ほど桜を愛でることがなかった。
花瓶に活けられた一輪のバラの方が好まれたようだ。
これはあくまでも主体がいて対象を見るという関係である。
それに対して、日本人は桜という対象に対して自己を投企する。
対象と主体が一体となる。
桜の中に包まれるという感覚が日本人の感性である。(「日本的感性」―触覚とずらしの構造―佐々木健一著、中公新書)
この視点に対する相違はパースと逆遠近法という西洋と日本の空間構成の違いかもしれない。
近代の視覚重視の空間構成に対して、嗅覚、触覚的な日本の空間構成について考察する必要がある。
貴志 雅樹
※「形式論ノート」は貴志雅樹が生前自身のブログに綴ったものです。