切れの構成法を思い立ったのは、大橋良介氏の「切れの構造」-日本美と現代思想ー中央公論社による。切れ・つづきというように、他者と切れることにより他者を際立たせ融合するという概念。(連続・非連続の概念とは異なる。)これは現代進行中のS邸のプロジェクトにおいて、平面形式と屋根の形式とを切れの構造で融合させられないかと考えているからである。
以下、大橋氏の世阿弥の「花」の部分を引用する。
華麗と簡素という二つの相反する方向はここで、互いに切れて独立しながら互いのあり方のうちへ浸透していく。ここに「切れ・つづき」の構造が成り立つのである。この切れ・つづきは、繰り返していえば人間が「生死」というあり方を背負っているところから生じるものである。-中略ー余剰を切り捨てるということは、日常的な自然性を切るということである。しかしその切れを通して日常的な自然性が、いっそう深い相において蘇るというところに、型の切れの本質がある。
貴志 雅樹
※「形式論ノート」は貴志雅樹が生前自身のブログに綴ったものです。故人を偲ぶ会を前に事務所のブログへも掲載させていただきます。