所在地 大阪府堺市
用途 専用住宅
構造 鉄筋コンクリート造
規模 地上2階
敷地面積 548.00㎡
建築面積 88.68㎡
延べ面積 134.43㎡
「オリエンテーション・アーキテクチュア」
大阪の南に位置する堺市の浜寺は、30年ぐらい前までは松林と海水浴場のある閑静な住宅地であり、別荘地でもあった。しかし、海は、当時の工業化社会への強い夢想によって埋め立てられ、臨海工業地帯となった。経済の高度成長期には公害を撤き散らし、今では、構造不況業種のレッテルを貼られ操業短縮を余儀なくされた工場が立ち並ぶ.わずかな間に、人間の思いつきで、街は目まぐるしく様変わりし、今では、海へのノスタルジーがかきたてられるばかりである。
この地に住宅を依頼されたとき、社会的環境よりも、人間の冒すことのできない自然と呼応するものをつくりたいと思った。そのため、区曲整理事業によって決められた境界線や道路に対して、直角や平行に建物を配置するのではなく、地球の地軸に沿って東西南北に2枚の壁(オリエンテーション・ウォール)を配すふことにした。この壁に、太陽と水の象徴として色を与え、人間が定位するための座標軸としてグリッドを切り込んだ。
その2枚の壁に対して、住居としての機能を付加していくのだが、内部では空間的な繁がりを持たせ、依頼主の要望である風通しのよいものにした。また、変化していく住機能に対応するために、光を通す障子で間仕切れるようにした。クライアントの要望は、そのほかに書斎と星を見る屋上が必要だということであった。書斎は、機能的に決めこまないということで、階段室にスペースを確保し、星を見る屋上は、鉄骨の展望台となった。
オリエンテーション・ウォール以外は、形態・機能構造とも固定したくはなかった。構造もそのひとつで、壁であるが、ラーメン構造のような様相を与え、それを裏切るように柱をずらした。壁によって4つに区画されたファサードでは、それぞれ異なった表現を試みた。最後に取りつけられ展望台は、星を見るという用途よりも、失われた海に対して開き、海へのノスタルジーの表現とした。
publication
新建築住宅特集1986年12月号
住宅建築1987年5月号
建築文化1987年12月号
建築文化1988年5月号
ARCHITECTUAL REVIEW (英)
毎日グラフ1988年9月25日号
毎日グラフ別冊イマどきの家2