所在地 大阪府大阪市
用途 住宅
構造 木造
規模 地上2階
敷地面積 75.83㎡
建築面積 43.89㎡
延べ面積 86.96㎡
施工 かしわだ工務店
大阪市内の住宅地に建つ家族3人のための住まいである。
約23坪と大きくはない敷地は三方を隣家に近接し、幅の狭い道路に面する東側以外からは光が入りにくい立地であったため、限られたスペースでいかに快適で広く感じられるような場を創り出せるかがテーマとなった。
そこで、最も長い時間を過ごすLDKを居心地のよい場所となるように1階の道路側に配し、敷地の奥に設けた玄関へは南側のアプローチを通ってアクセスする計画とした。
このアプローチは建物の奥行きを感じさせる効果を生み出し、上部に設けた庇が雨天時でもストレス無く建物へ出入りすることを可能にしている。
また、建物と道路の緩衝帯として屋外にウッドデッキを設け、プライバシーを確保するために木の塀で囲った。
敷地の奥からキッチン・ダイニング・リビング・客間を兼ねる和室と続く一室空間は、採光を担うリビングの大きな掃き出し窓を介してウッドデッキへと繋がることで、実際のサイズ以上の広さを感じられる場となっている。
室内を有効利用するために1階は廊下のない計画とし、玄関をLDK・トイレ・階段へと直接アクセスできる場所とした。
玄関はコンパクトなサイズであるが、天井までの高さのガラスの吊戸でLDKと間仕切られていることで床と天井が繋がって見え、階段部の吹抜の効果とも相まって、視覚的に広がりのあるスペースとなっている。
これにより、キッチンスペースは玄関から丸見えであるものの、システムキッチンの側面に設けたモルタルの腰壁とカップボードや冷蔵庫を隠す背面の引戸が、来客の視線を遮る役割を果たしている。
2階は家族のプライベートなゾーンと位置づけ、主寝室、子供部屋、室内干しができる広めの洗面脱衣室、浴室等を設けた。
部屋が分かれるために通さざるを得なかった廊下は、一部幅を広く確保することでディスプレイや収納の場を兼ねさせ、ただの移動空間にならないよう配慮した。
各個室にクローゼットを設けずに置き型の収納を利用する計画としたことも、家族の成長に合わせた部屋の役割の変更を可能にするとともに、スペースを広く使う工夫となっている。
育ち盛りの男の子のために当初より予定していた玄関の手洗は、設計期間中に新型コロナウイルス感染症が流行したことにより、必要不可欠な存在となった。
また、主寝室の一角も在宅勤務のためのスペースとなり、生活に潤いを与える外部空間とともに、コロナ禍に対応した住宅の要素として機能している。
クライアントのナカノくんは設計者の高校時代の同級生であり、設計から竣工に至る過程でたくさん対話をしたが、ご夫婦の自分たちらしく「住む」ための考え方から学ぶことが多かった。
そして、その気持ちに寄り添った施工をしてくれる工務店と今回の工事で出会えたことも幸運であった。
ご家族の「住む」ことへのこだわりが詰まった家づくりのお手伝いができたことに、設計者としての幸福を感じている。