ヘルメスの家
HERMES HOUSE
1992

 
 
 
 
 
 

所在地 兵庫県宝塚市
用途 専用住宅
構造 鉄筋コンクリート造
規模 地上2階 地下1階
敷地面積 243.66㎡
建築面積 112.84㎡
延べ面積 242.20㎡


住居とは、個人・家族・社会、技術・人間・自然等あらゆる関係性を反映してきた。ところが、高度情報化システムの確立により、人間の身体的リアリティーを伴わないまま、個人・他者の関係が成立するにいたった。関係性が希薄化していくシステムの中で、住居の形態を決定することは困難になってきている。

建物の敷地は、逆瀬川の高台にある。西側の道路と、約20m接し、東へ向かって細くなっていく東西に長い三角形の敷地で、北側には、貸駐車場、南には市が所有する斜面があり、眼下に美しい眺望が開けている。クライアントの要望も、この眺望をできるだけ生活空間に取り入れるということであった。

形態を結締していくとき、人間の身体的サイズ、あるいは技術に裏付けられたモデュールとして機能する基本単位を設定する。この基本単位は、コンクリート・グリッドとし、構造体としての必要断面、サッシュ取り付けのための欠き込み、コンクリート打ち放し仕上げのための増打分を考えて、330mm角の柱、梁で構成した。

この単位を敷地の制約、社会的規制を受けながら家族の繋がり、機能的な要望の中で集積させていき、平面計画を行った。高さ関係(立面計画)も、この基本単位を、機能・必要な天井高・ハイサイドライトによる光を考慮しながら積み重ね決定した。

建物は、地下1階、地上2階建てで、プライベートな部分は、地階と2階に設けた。地下は母親のスペースで、ドライエリアにより光を確保し、地上からの別アプローチも設けた。2階にある主寝室はグリッド2個分の天井高をもつ。子供室は間仕切りがなくグリッドの平面的な変化で、空間を切った。1階は、家族の集まるスペースで、ワンルームとし、天井・床高に変化を与えながら、基本単位のグリッドを感じられるようにしている。

基本単位をさまざまな関係の中で、生成変化させていくことにより、住居を構成していく方法は、この住居が社会との間に結ぶ関係性を顕在化していく試みでもある。
publication
新建築住宅特集1992年12月号
モダンリビング1993年5月号
建築MAP大阪/神戸
ニューハウス2001年11月号
建築ジャーナル2002年7月号